扁桃切除手術の記録

扁桃切除手術*1を受けました。
退院後、周囲の人がいろいろと聞いてくれたり、扁桃切除を検討しているので教えてほしい、と聞かれることが幾度かあったため、ここに記しておこうと思いました。

基礎知識

どういう手術なのかを簡単に紹介します。

扁桃とは

まず扁桃という器官は、喉にあるリンパ器官です。 リンパ器官というだけあって、鼻や口から入ってきた細菌やウイルスをとらえる免疫の役割を持っています。

免疫機能が未熟な子どもは、扁桃の機能に頼る割合が高く、ウイルスや細菌に感染しやすいのですが、成長するにつれて扁桃以外の免疫機能が発達してくるために、感染しにくくなってきます。それにつれて、扁桃自体も徐々に縮小します。 ただし、幼少期に扁桃炎を頻発するなどで、大人になっても比較的大きなサイズを保つ人もいます。

ちなみに「扁桃」というのはアーモンドの種子の別称です。 アーモンドの種子に形がにているという理由でこの名前がつけられたらしいです。 かつては「扁桃腺」と呼ばれていましたが、「腺」というのは身体の中で分泌活動を行う器官の名称であり、以後の研究によって腺の役割ではない説が有力となったため、現在では「扁桃」と呼ばれています。

扁桃には「咽頭扁桃(アデノイド)」「耳管扁桃」「口蓋扁桃」「舌扁桃」の4つがありますが、一般に扁桃と呼ぶ場合、口蓋扁桃を指します。

口蓋扁桃摘出術とは

口蓋扁桃を切除する手術です。 以下を基準として、手術適応か否かを判断されます。

  • 習慣性扁桃炎
    • 年に3,4回以上の頻度で急性扁桃炎になるひと
  • 扁桃周囲膿瘍
    • 急性扁桃炎になりすぎて炎症が周囲に波及し、膿瘍になったひと
  • 扁桃肥大
    • 睡眠時無呼吸症候群で扁桃が大きい*2ひと
  • 病巣扁桃
    • 扁桃が他の疾患*3の原因になっているひと

自分の場合は習慣性扁桃炎と診断されました。 扁桃肥大ぎみでもあったのですが、頻繁に喉を起点とした風邪をひくためです。明確な検査があるわけではなく基本的に自己申告です。

経緯と注意点

かかりつけ医の診察から退院までの経緯をメモります。

診断〜入院

入院に至るまでに複数のステップがあります。

  • かかりつけ医で診断&紹介状取得
  • 大規模病院で診察&手術の予約
  • 術前検査(手術1週間前)
  • 検査結果説明&入院手続き

手術を受ける病院の選定

多くの場合、かかりつけ医からの紹介状をもって大規模病院で手術をうけることになります。 いきなり大規模病院*4に行くと、選定療養費として初診時5,000円がかかります。

どこの病院にするかはかかりつけ医と相談ですが、口蓋扁桃摘出術を都内で受けるなら、神尾記念病院JR東京総合病院あたりが有名なようです。ただ、口蓋扁桃摘出術は耳鼻咽喉科の手術としては基礎中の基礎らしく、どこで受けても特にリスク等違いはありません。手術前後で数回の通院を考慮して、自宅から近い病院にするのをオススメします。

自分の場合も自宅から近い東邦大学医療センター大橋病院にお世話になりました。2018年6月に新病棟が設立されたばかりで、とても綺麗でした。10日間ほど寝食を過ごすため、自分にとっては綺麗な病院というのはとても重要な要素でした。

入院までの心構え

重要なのは、入院直前に風邪を引かないこと、虫歯にならないことです。 ここまでの検査や10日間のお休み調整がすべて無に帰します。 虫歯がダメなのは、手術のときに口の中にいろいろと突っ込むので、悪い歯があるとさらに悪くなったり欠けたりするから、と説明されました。

費用と高額療養費制度の活用

口蓋扁桃摘出術はどの病院でも10日前後の入院を要するため、高額療養費制度が使えます。 これは、医療費が一定額*5を超えた場合に、その額を上限としてオーバー分を国が負担してくれる制度です。ここで注意されたいのは、以下の点です。

医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する

例えば、10月25日に入院して11月4日に退院した場合、「10月25日〜31日」と「11月1日〜4日」はそれぞれ独立した医療費とみなされ、高額療養費制度の上限はそれぞれに適用されます。したがって費用を最小に抑えるためには、月をまたがない入院期間を設定する必要があります。自分の場合は1日オーバーして、トータルで10万円強の負担となりました。

また、入院は病室によってグレードがあり、例えば個室を希望すると高くなります。差額ベッド代は高額療養費に含まれません。病院都合で差額のあるベッドになる場合もあるので、初期段階で合意しておいたほうがいいです。高額療養費制度や差額ベッド代など、費用面について、病院側は信じられないくらい無頓着で、数万円は誤差くらいの勢いでこられます。一般庶民の我々が積極的に情報を収集し、交渉していく必要があります。

入院〜手術

お昼ごろに入院し、その日は手続きや検査などを済ませるのみでした。 手術はオンコールといって、呼ばれたら手術室に行くというスタイルのため、ソワソワしながら待っていました。結局14時ごろに呼ばれ、看護師さんに案内されて歩いて手術室に行きました。道中の風景はまさにドラマや映画でみるやつで、楽しかったです。

手術自体は全身麻酔なので、気づいたら寝ていて起きたらすべてが終わって自分のベッド、というかんじです。 点滴をつけたまま、喉の痛み止めを飲んで就寝です。

術後〜退院

手術翌朝、起きたらベッドとパジャマが血で染まっていました。ありがとうございました。

喉が痛すぎかつ発熱もあり、世界を恨みました。看護師さんはクールです。

入院後半は出血もなく食事も平常にとれる状態になったため、退院を希望したのですが、「術後一週間時点に出血リスクがある」とのことで、入院を継続しました。このあたりはおそらく以下の論文が論拠になっていると思われます。統計的に有意なのかという疑問はありますが、専門外すぎてわかりません。

ヒマはヒマなのですが、喉の痛みと微熱はあり、活字をよむのはなかなかしんどかったので、主にマンガを読んだりラジオを聴いて寝落ちしたりしていました。キングダムとバクマンを全巻読みました。最高におもしろかったです。ファルファル。

退院日は片づけと手続きを済ませ、午前中には自宅に帰っていました。翌日からは喉をいたわりつつも普通に過ごしました。

その後

退院から一週間後に経過観察のための受診をし、特に問題ないとのことで、運動やお酒も解禁されました。 退院直後は喉の違和感が残っていましたが、退院から10日が経ち、もうほぼ通常どおりに生活しています。

まとめ

体調が改善したかはまだわかりません。がんばっていきたいです。 なお、最近は扁桃切除せずに凝固術や抗生剤で治療するのが主流らしいです。 それらを試して改善が見られなければ、切除を検討されるといいかもしれません。

参考

*1:正確には「口蓋扁桃摘出術」

*2:マッケンジーの分類によりⅡ°以上

*3:掌蹠膿疱症・IgA腎症・胸肋鎖骨過形成症

*4:大学病院などの「特定機能病院」と、病床数500以上の「地域医療支援病院」

*5:収入に応じて決まる