ダイアローグ 対話する組織

気づいたら2ヶ月近くブログを書いておらずやばいと思ったので、今日読んだ以下の本について書く。

ダイアローグ 対話する組織

ダイアローグ 対話する組織

なんで読んだのか

弊社には、新卒入社社員の各々に対して既存社員(=メンター)を1名ずつ組み合わせ、各組で月に1回お昼ごはんを共にし、いろんな話をする、という制度がある。メンターは対象の新入社員と異なる部署から選出され、半年で組チェンジする。

自分は昨年の前半と後半で2名の新卒氏と組になっていて、今期で3人目になる。自分を選出し続けている人事部に重大な欠陥があることは明らかだが、せっかくなので先輩面で話をしつつ、会社の金でお昼ごはんをいただいている。

メンターを対象にした事前ガイダンスで「参考にどうぞ」と配布されたのが、上記の書籍だった。自分は精神がひねくれているので、普段こういうビジネス書的なものは敬遠しまくっていて手を出さない。今回はせっかくもらったし、人間とのコミュニケーションが著しく苦手な自分にとって助けになりうるかも、というわけで読んでみた。

著者は中原淳さん、長岡健さん。いずれも経営学社会学を専門とされている大学教授らしい。研究室のウェッブサイトが信じられないくらいポップでキュートな仕上がりで、違う世界線のアカデミアをみた。

東京大学 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する

俺なりのメモ

読みながらメモってたやつを晒す。日本語と注釈を少しなおした。引用ではなく自分の解釈とかごっちゃになって書いてるので、興味のある人は本を読んでください。読みたい人いたら言ってくれれば授けます。

第1章: 「伝わらない」組織

  • 導管メタファー
    • ビジネスの場で支配的なコミュニケーション観。
    • 情報は送り手から受け手へ伝達され、主観などはノイズとされる。
    • 受け手の共感や行動変化は得られにくく、「伝わらない」。
  • ストーリーテリング
    • 人はストーリーで理解・記憶する。
    • 導管メタファーの一形態にすぎず、まだ「伝わらない」。
  • コミュニケーション=相互的理解に至る継続的な相互作用のプロセス*1

第2章: 「対話」とは何か

  • 合意に至るためには、客観的な事実に対する意味付けを共有する必要がある。
  • 物事の意味とは客観的事実ではなく、社会的な構成物である。(社会構成主義*2 )
  • 意味は根本的に他人とは共有し得ない。(主観主義)
  • 「聞く」は受動的な行為、「聴く」は積極的かつ意図的な行為。
  • 「議論」は意思決定が目的、「対話」は意思決定の問題や過程に対する理解・吟味が目的。
  • 対話による言語化と他者比較により、他者だけでなく自己理解も深まる。

第3章: 「対話」が組織にもたらすもの

  • 協調的な問題解決
    • 適切な問題設定のためには意味付けの共有が必要であり、議論より対話が有効。
    • ベトナム戦争の泥沼化は、卓越した即興的対応力により局所最適な問題設定が行われた結果。
    • トヨタの問題解決研修では対話による問題設定に重点を置いている。
  • 知識の共有
    • 事実(宣言的知識)ではなく暗黙知・実践知(手続き的知識)を共有したい。
    • 手続き的知識は多様かつ不良定義問題*3であることが多く、共有が難しい。
    • 個人間の知識の伝達ではなく、「協調的問題解決のネットワークを活性化する」という意識。
  • 組織の変革
    • 組織の文化や理念の共有は導管メタファーでは難しい。
    • 個々が自身の体験にもとづいて理解する必要があり、対話とそれに伴う行動が有効。
    • オープンなコミュニケーションとそれが可能な(心理的安全)土壌の実現が重要。
    • 過剰適応によりそこから変化しづらくなるリスクもある。

第4章: 「対話」による新たな学び

  • 学習とは「伝達」ではなく「変容」であり*4、対話はこれをもたらす。
  • 目指すべきコミュニケーション
    • 「情報伝達」ではなく「相互理解」、「組織の結束力」ではなく「個人の主体性」。
    • つまり、「効率的」でも「緊密」でもなく、「オープン」なコミュニケーション。
  • 「振り返り」は自身の語りとそれに対する他者のコメントによって行う共同的なもの。

思ったこと

ちょうど最近、前期の振り返り面談と評価フィードバック面談があった。そのときに「問題設定ムズい」って話をした。「なにが問題でそれがどうなればいいのか」を考えることに苦手意識があるし、実際すごく時間がかかる。本書を経て、自分は議論と対話のバランスにおいて前者の比重が大きすぎるかも、と思った。ゆるふわな対話をもっと許容していくぞ、というお気持ち

そもそも振り返り面談自体、偉い人氏がクソ忙しい時間の合間を縫って全員と面談しており、コストがすごい。それぞれで勝手に振り返っとけばええんちゃうんかと思っていたが、本書を経て、面談という形で時間をとっているのにはそれなりに意味があるのかも、と猛省した。対話による社会構成主義的な意味構成及び共有の場と捉え、今後は積極的に活用していきたい。

個人から組織(例えば自分が所属する部署)に視点を広げると、第3章で言及されている「知識の共有」がたびたび課題になる。各自の知識を相互に伝達すること(例えばすべての知識をオンラインドキュメントに残す)という導管メタファー的なアプローチではなく、そもそもの問題を共有し、各位がその解決に向いた結果として、必要十分な知識が適切な対象に共有される、という状況が理想っぽい。

というところまで書いて、よくよく考えると、新卒氏のメンタリングのために授けられた本だったが、自分の普段の業務に対する学びを得る結果となった。というか、新卒氏はぼくよりしっかりしてるからなにも心配がいらない。メンタリングしてほしい。

*1:『レトリックと人生』https://www.amazon.co.jp/dp/4469211257

*2:『日常世界の構成―アイデンティティと社会の弁証法https://www.amazon.co.jp/dp/B000J8XS4S

*3:問いと答えが一義的に結びついていない問題

*4:『 Seeing What We Build Together: Distributed Multimedia Learning Environments for Transformative Communications』 https://web.stanford.edu/~roypea/RoyPDF folder/A73_Pea_94_JLS.pdf